JAWS-UG・Slush Tokyo・LinkedInそれぞれの視点からのコミュニティ成長の秘訣

 今日は東京カルチャーカルチャー(渋谷)で行われた、「コミュコレ!新年会~2019新年スペシャル~」に参加してきました。セッションは2部構成で、第一部では「企業とコミュニティ最前線!」をテーマにSlush Tokyo CEOの古川遥夏さん、JAWS-UG立ち上げ人でパラレルマーケターの小島英揮さん、Linkedinカントリーマネージャーの村上臣さん、第二部では「街に溶けていくコミュニティの今」をテーマに渋谷区副区長の澤田伸さん、東京クロノスというVRゲーム開発中の岸本健人さん、SHIBUYA TSUTAYA店長の清水悠佑さんが語る、豪華なトークでした。

 古川さんは、大学時代ボランティアとして参加したことがきっかけでSlush Tokyo運営に参加し、2019年にCEOに就任。全編英語イベントで、世界と日本のスタートアップを繋ぐ活動をしています。

 村上さんは、YAHOO Japan!のモバイルシフトの立役者ですが、2018年にLinkedInのカントリーマネージャーに就任。国内ユーザーは200万人を突破し、職業別のコミュニティが成長し始めているなど、LinkedInを日本でもビジネスコミュニティの標準プラットフォームとするべく再始動を推進しています。

 小島さんは、言わずもがなJAWS-UG立ち上げの立役者。コミュニティマーケティングの文脈で語られる事が多いそうですが、オールラウンダーなマーケターでもあり、現在パラレルマーケターとして、ABEJA、ヌーラボなど先進企業複数社の支援をしています。

 そんな三人のコミュニティについてのお話は、熱量があって、肌感覚がひしひし伝わってくるものでした。お話の内容は多岐にわたるので、下記の二点に絞ってまとめます。

コミュニティの必要性について

 今、ビジネスの世界でも、ある特定のコンテクストで横のつながりを求めることが増えています。例えば、会社の中で共通の課題や関心を共有できず悩んでいたら、実は他の会社も含めると同じ関心を共有する人がたくさんいた、ということが良くあります。海外ではLinkedInがそれらの人々を繋ぐためのプラットフォームの一つになっているそうです。関心軸で結ばれたコミュニティが、新しいビジネスやプロジェクトの原動力となっています。

 スタートアップの起業家にとってもそれは同様です。もちろん採用や出資などにも必要かもしれませんが、孤独な起業家にとって、同じ課題を抱えた仲間の存在は何より貴重です。しかしオフラインで人と繋がるのは中々ハードルが高いものです。そこで、コミュニティという存在を介することで、人と人がつながるハードルが下がる。例えば、誰かが一人繋がっていれば、そこから会話の輪が広がり仲間が広がる。Slush Tokyoもそうしたコミュニティ的な繋がりを後押しする場にしていきたいそうです。

 IT企業にとってもコミュニティは重要です。自社の製品のことを一番良く知っているのは開発者ではありません。個別の機能そのものより、それらをどう組み合わせて、どういう場面で使うかが大事だからです。それらを一番良く知っているのはユーザーです。そして熱量の高いファンほど、製品への愛をもって貴重なフィードバックを投げてくれます。それらのユーザー同士を繋ぎ、ユーザーの声を聞きながら、ファン自体を自走的に増やしていく仕組みが、いま多くの企業から求められています。

コミュニティを成長させるポイント

 何よりもまず参加者のアウトプットが大事です。逆に言えば、アウトプットしてくれるコアなファンこそがコミュニティの核となります。アウトプットして他の人に貢献することで、コミュニティが成長するとともに、その人自身の周りにも様々な人が集まりインプットも増えます。

 プロダクトとの関係で言えば、フィードバックやアウトプットが十分に集まらないとしたら、まずはプロダクトそのものの魅力を検討したほうが良いでしょう。コアなファンが付いたときから、コミュニティマーケティングが始まります。

 コミュニティをマーケティング活動として捉えた場合、KPIを設定するのは大事です。ですが、単純な人数よりも重要なことがあります。もちろんNPSも大事ですが、新規の参加者がどのくらいいるか、参加者の有益なアウトプットがどのくらいあるか、懇親会参加者数がどのくらいかなど、参加者の熱量を量ることも重要です。

 そしてコミュニティは、集まる参加者の属性によって作り方が異なります。例えば、アメリカで成功した方法をそのまま持ち込んでもうまくいきません。例えば日本の名刺交換文化を生かすなど、それぞれの文脈に合わせた独自の方法を模索することが必要です。
 
 コミュニティのリスクの一つとして、一定の期間メンバーが固定化すると、新しい参加者にとっては敷居が高くなる、あるいは内輪化しすぎてしまう傾向があります。コミュニティが自走し続けるには、リーダーの新陳代謝を促し、それをポジティブなことだと考える文化が必要です。人数が増えれば関心軸も分散していくので、それぞれの粒度に合わせた株分けも必要になってきます。

終わりに

拙い文章ですが、何となくイベントの学びは伝わりましたでしょうか。#CMC_Meetupに参加されている方々にとっては既知の内容も多いかと思いますが、自分自身の学びを整理しつつ、これからコミュニティ作りやコミュニティマーケティングにチャレンジされる方に、多少なりとも参考になれば幸いです。もし事実誤認などあれば、Twitterなどでご指摘頂けると幸いです。

実は一番心に残ったお話が、古川遥夏さんのこんなエピソードでした。

「アウェーのエンジニア勉強会に参加したが、初めは周りに知人もいなくて隅っこでおにぎりを食べていた。そんな時にエンジニアの人が話しかけてくれて、聞くとSlushに参加したことがあるそうで、話が盛り上がってたくさん友達を紹介してくれた。Slushという共通のタグで沢山の人と繋がれた」

ところが、待ちに待った名刺交換タイムで、会場の雰囲気に気圧されてしまい、自分自身が会場の隅っこでおにぎりを食べている状況になってしまいました。「アウトプットしないアノニマスは、会場の隅でおにぎりを食べるハメになる」もっともっと実績を積みつつ、積極的にアウトプットしていかねばなと思ったのが今日のオチでした。